コケシノブ科植物栽培総括

先日コケシノブ科のシダについて栽培方法をご質問いただきましたので、改めてあげておきます。
コケシノブ科植物は水草ではないので(あくまで水中で育てる事の出来る種がほんの少し存在するだけ)、基本的には高湿度栽培、密閉栽培がとても好成績です。
滝の傍に生えるもの、時折水に浸かるものでも水中では育たない事が多いですので、他の陸生植物の水中化実験の様に試すのは面白いですが、「水中で育てられる植物達」とは思わないのが無難です。
ボルビティスやミクロソラム、ブセファランドラなどの渓流性サトイモ類の水上管理のような密閉栽培で良く出来ますので、ぜひそちらで育ててみてください。とても美しい新芽を次から次へ出してくれますよ。

※栽培方法について※


◆栽培容器…密閉ケースなど

まず数や大きさにもよりますが、少しだけですと少し大きめのタッパーなどでも大丈夫です。一株二株ならパンケース程のサイズでも大丈夫でしょう。

数十株単位で栽培予定ですと、水槽が見栄えは良いですね。隙間ゼロの状態で封を出来る蓋を合わせて密閉にできますが、最近はそう言ったピッタリのふたが中々御座いませんね。

衣装ケースは手軽でかつコケシノブが育つ程度の密閉を保てる容器ですが、如何せん不細工ではあります。

ワーディアンケースなどは密閉具合にもよりますが乾きやすいです。温室などですと奥ならば湿度が保てて良いかも知れませんが、出来る限り湿度が変動しにくいことが前提になります。

◆照明…種類によりますが。

コケシノブ科植物は基本的に光が好きです。
朝日が当たる環境をもっともよく好みます。
もし人工照明で栽培の場合は、60cmの蛍光灯二灯はあると安心です。
光をより好む種はそれでも足りない場合があります。

・Crepidomanes、Abrodictyum、Cephalomanesは蛍光灯二灯~で概ね育ちます。栽培もおおむね容易です。

・Hymenophyllumも一部の種は蛍光灯二灯~で大丈夫ですが、大半はそれでは足りない事があり、メタハラやLED、太陽光である必要が出てきます。栽培は難しいものが大半です。

・Trichomanesは非常に多岐にわたるので一概に説明できません。栽培も性質もピンきりです。

・Didymoglossumは蛍光灯二灯で十分である事が多いです。大型種は解りませんが…


◆温度湿度

種類によって ばらつきが多いのですが、基本的には20℃~30℃までで育てれば間違いはありません。
私の温室では15℃~33℃ぐらいには振れ幅があります。それ以上の寒暖差は避ければ無難と思います。
高地性のモノは高温すぎるとダメになりますので注意デス。特にHymenophyllumの雲霧林種は怖い。

湿度は計っても無駄です(爆) それはもう、最大限加湿し密閉してあげてください。栽培できるようになってから、湿度を下げる事を考えてみると良いと思います。

加湿器は必要ありません…と言うか、入れる事が出来ないと思います。

超音波のミスト発生装置も、使いこなせれば良い結果を生むことはありますが、必須ではありません。超音波加湿器で甘やかすと結果弱くなり、ミストが壊れた瞬間枯れる事もままありますので、ムシ ロ避ける方が無難です。
霧吹きなどで十分ですし、環境を作れば霧吹きも不要です。


◆植え込み材料

ミズゴケは最も便利で良い結果を得られます。
基本的にホームセンターの粗悪品さえ避けて園芸店の(ホームセンターにあるようなものがたまにおいてあるので油断なりませんが)ミズゴケを買えば大抵間違いはないです。ランクについてもお気にされるのは大変良いことです。

安いミズゴケは何が安いかと言うと、明確にダメだからです。たとえば年数がたちすぎている、腐りかけている、選別の時点で短かったり微塵が大量に含まれているぐらいなら可愛いものです。とは言え、悪いミズゴケを好むシダもいるのでこれはこれで使い道はあるのですが…
長くて、ゴミが混入してなくて、フレッシュで丈夫で崩れにくい。ランクが上がるとこの辺の質が向上していく感じですが、正直フレッシュであればゴミが入っていようが短かろうが栽培には問題はないので、最高級ミズゴケで植える必要まではありません。
ニュージーランド産は良いものが多く、AAAぐらいなら十分すぎる程ですが、たぶん購入したこと自体がありませんので解りませんがAAでも楽勝なのではないでしょうか。

プラスチック鉢や素焼き鉢の底に鉢底石(一㎝から二㎝の大きさの日向石(中粒)など。)を一㎝から二センチほどの高さまで敷き詰め、その上に霧吹きなどで戻したミズゴケで植えつけると良いです。ちなみに鉢底石もホ ームセンターは粗悪品が多く、栽培に於いて危険ですらあります。安いものは使わないのが無難です。高ければよいというものでもありませんし、初めてですとどれが適切なのかはわかりにくいとは思いますが…

地生種(Cephalomanes Abrodictyum Crepidomanes Trichomanesの幹立ちや大型種等)なら用土での栽培も可能です。ソイルでも育ちますよ。余っているなら利用すると良いと思います。(高いですが養分アリ有機質アリで崩れにくい確かに良い用土です)どのソイルが良いのか、と言うのは使い分けて実験したことがないのでわかりません。

園芸用土ですと赤玉土の小粒が無難です。配合は「なぜ混ぜるのか」を計算に入れる事が出来ないうちは特に考えない方が良いと思います。混ぜるとしても桐生か鹿沼土ですね。
用土は総じて硬質が長持ちして良いです。ただし焼成赤玉までは必要ないかと。試したことはありません。

◆属ごとの水分管理

①CephalomanesやAbrodictyumなどの地生種は腰水栽培が適しています。腰水とは容器内に浅く水を張って、常に鉢底から給水する方式です。川沿いに生える種(ソテツホラゴケなど)は用土表面ギリギリまで水があっても平気です。思いっきり陸上に生えるモノ(オニホラゴケやAbrodictyumの幹立種等)は、鉢底石が入っている高さ位までの腰水が良いです。

②CrepidomanesやHymenophyllumなどは着生種が多いのですが、腰水は無し、またはごく浅い腰水(鉢底石以下の水深。ミズゴケは直接水に触れない方が良い。腐ってしまうので)だと良いです。CephalomanesやAbrodictyum、Trichomanesのヘゴ着生種もこれに準じますが、さらに難しくなります。圧倒的です。

③Trichomanesは種によって違うので一概には言えませんが、水辺に近い地生(アマゾンのシャーマンシダなど)なら①で、水辺ではない地生(メイフォリウム等)や着生なら②で育てると何とか。

④Didymoglossumは水辺のモノは深い腰水が良い感じです。朽木に着くような種類はべちゃべちゃのヘゴ着生などが良かったりもしますがまずはミズゴケが無難かも。
有名なカメルーンのコケシノブは正確にはTrichomanesではなくDidymoglossumなのでこの栽培が適していますが、水中栽培の方が普通になりつつあるようなのでそれでよいと思います。水上でも育ちますよ。胞子付けてあげたいですね。

基本的には、鉢底石までの腰水または腰水無しが無難です。アマゾンの水没するエリアに生えるモノはもっと水深を好んだりもしますが、浅い水深でも育たないわけではないので…
こう書いていますが、鉢ではどうしても植え付けれないものもあり、そう言ったものは工夫するしかありません。ヘゴやプランターなど。


◆肥料など

それほど多肥を好む種はありません。いままで肥食いのコケシノブには遭遇したことがない気がしますが、しかしまったく求めないわけではありません。
しかし肥料を与えるよりは、植え替えの方が効果的です。根の成長が遅いので一年から二年は管理して植え替えてやると良いと思います。余談ですが、密閉で数年ほど栽培して植え替えもせずにいるとふとした時に葉が黄みがかり、慌てて水を与えたところ(ただの灌水。ハイポなど無し)数週間後には元気な葉色に戻っておりました。普通に水を与えている限りその水の中の栄養素でイケてしまう部分はありますが、流石にこんなスパルタ管理はダメですよ。

肥料を与えて用土にダメージを与え、その結果植え替えを早くせねばならなくなり、コケシノブの折角伸びた根を傷め、ダメにする方が私は怖いように思います。
悪いミズゴケを買わない方がいいのはこの点もあり、悪いミズゴケは傷みやすく、植え替えが必然早くなってしまうのです。同じことがその他の用土にも言えて、安価さで選ぶと大抵の場合寿命が短い。最高級のモノは選ばないでいいので、選別済みだとか、硬質だとか、そう言った他のとちょっと値段が高い方が安心です。とは言えピンきりですけれどね。良い用土は自分で試して良いものを見つけていくしかない。

◆導入直後

暫く強い光には当てません。湿度も全力で高めてください。
いつごろまで? と言うのは状態によるので難しい所です…
用土に根が馴染み、しっかり吸水をし安定するまでがキーです。ダメな時は一瞬ですぞ!
とは言え、「発根して安定する」普通一ヶ月ぐらいで出来るはずの事が基本的に一年後二年後とかなので、それを生真面目に待っていると光が足りなくなります。なので一週間ぐらいでしょうかね…


こんな所ですね…属ごとの大まかな説明ですが。
此処に載っていない特別な属(シノニム的な特別でない属名もありますややこしい)はさらに難易度が高いと思っていただいてよいです。
白いコケシノブ。PleuromanesはHymenophyllumの高地性種並。
毛に覆われたコケシノブ。SphaerocioniumもHymenophylluの難物系。
Polyphlebiumは今のところ私からしか手に入らないと思うのでもし出すなら解説しますが…ヘゴ着生の大変生育の遅い種です。ヘゴ着生は大抵難しいと思ってください。
まだまだ変なものもありますが私も育てていないものは流石に説明できないのでここでは省きます。南米系は面白いので探したい。


水中栽培についてはたぶん私よりも水草を真面目にされている方が圧倒的に強いと思いますのでコメントはせずにおきます。
インド便の種の他に、最近はビンタン? のものも水中でと言われていますね。ちょっとだけ欲しい。
ソテツホラゴケは水中だと圧倒的に動きが遅い気がします。と言うかソテツホラゴケが水中で育つというのなら、安価で山ほど入荷しているのだからあちこちの水槽で綺麗に生育してなきゃおかしいのでは…
水辺に生える種に期待するのはアリなのでしょうけれど、ソテツホラゴケの一例を見てもそんな簡単なものではないと言えるかと。

コケシノブ科植物は生育が非常に遅く、自生地でも数十年はかけて育っている株が多いです。特に単茎種。
栽培方法をいろいろ試すのは良い事だと思いますが、そろそろ確かな方法を選択して水上水中使い分けて育てても良いと思います。安いから枯れてもまた買えばいいや、と大量消費していい植物じゃないと思うの…。
人間が増やしたわけでない採取植物ならなおさらに。
いい加減な扱いで安いものは、支持しちゃいけない。

しかし生産で安価にするのは素晴らしい事です。その魅力が認められて、増やされて、そして自生地に頼ることなく人から人へ、手と手の中で循環していく。…今はまだほんの数種ですが、今後多くの魅力的な種が、そうやって積極的に増やされ流通されるようになればよいのですが…そうなってほしい。きっと、そうしなきゃいけない。
高めるべきは需要より栽培管理の認知度。もうちょっと積極的に栽培方法を公開しないといけないのかな。難しいなぁ。
by green-2-gleaner | 2015-04-05 02:52 | 栽培方法等 | Comments(0)


あの日見たシダの名前を僕達はまだ知らない。


by ゆう

プロフィールを見る
画像一覧

カテゴリ

まえがき
採取記録(旅の記録はこちらから)
コケシノブ科一覧
渓流植物
水生植物
着生植物
乾燥地の植物
シダ植物
フランシー情報
栽培方法等
New Caledonia採取植物リスト

検索

最新の記事

休止中
at 2017-06-21 21:20
GWにて
at 2017-05-03 16:03
Trichomanes re..
at 2017-04-16 12:36
Sannantha lera..
at 2017-03-21 00:44
Cyathopsis alb..
at 2017-03-19 13:03

最新のコメント

お待ちしてますよー!
by まさやん at 00:49
Thank you. ..
by green-2-gleaner at 15:09
Taiwanese Cr..
by green-2-gleaner at 14:37
Thank you. ..
by green-2-gleaner at 14:33
this name is..
by 11112jeff at 20:49

KokeShinoBu-log

世界中の不思議な植物に興味があります。
着生植物、多肉植物。
水生植物、渓流植物、高山植物。
シダ植物コケ植物、草本木本、綺麗な花も不気味な花も、美しい葉も奇妙な葉も、根も葉もない植物も、とにかく変なものなら何でも好きです。
主にコケシノブ科植物を探す中、気になった植物を見つけては一緒に持ち帰り栽培しています。

面白い植物の記録をたくさん書いていけたらいいなぁ。

◆お問い合わせは、こちらからお気軽に。
green_green_gleaner☆yahoo.co.jp
☆⇒@に変えてね。
多種を少量採取するスタンスのため、お応えできるかどうかはわかりませんが…

フォロー中のブログ

LIFE+aq→
A.P.A
RAIN FOREST
雑草好きのブログ
アクア爺
しだ撮り歩き

ブログパーツ

外部リンク

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

自然・生物
旅行家・冒険家

画像一覧